酷似そっくり)” の例文
酷似そっくりといえば、塚の左手、遙か離れた所に、植え込みが立っていて、それが雑木林に見えるのも、あの場所の景色とそっくりであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やっこさん、宮岡警部に写真酷似そっくりに変装してやがった。二人宮岡警部が出来ちゃって、どっちが真物ほんものだか分らなかった。そのために遂々捕え損ったんだそうだよ
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
子供は此方こっちへ振りむいた。今まで炉の前にしゃがんでいたのが、燈火あかり真正面まともにうけてひょいとちあがったところを見ると、それが背高のっぽうのジャッケに酷似そっくりではないか。
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「ちょっとも似たとこが無いぢゃないかな! あの子は! お咲さ酷似そっくりの顔しとる!」
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
乃公はびくともせずに歩いていると、前の方で一群の子供がまた乃公の噂をしている。目付は趙貴翁と酷似そっくりで、顔色は皆鉄青てっせいだ。一体乃公は何だってこんな子供から怨みを受けているのだろう。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それと云うのも石像の顔が、光明優婆塞こうみょううばそく酷似そっくりだからである。実際それを行者と云うには、余りにその顔は悲しそうであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頭が混乱していた……変化……それに酷似そっくりの顔……あの青年の告白……私は静かに坐って、思想かんがえを纏めようと努めたが、眼はひとりでに書架の上の骸骨の方へ惹付けられていた。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
それは品の好いしかも非常に美しい、それでいて私のくなった妻に酷似そっくりなのです。
消えた霊媒女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
彼女酷似そっくりの踊り子を彼女そのものに仕立て上げ、換え玉として城内へ残し、彼女だけ抜け出そうというのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
余り酷似そっくりなので異様な無気味さを感じた。
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「ご覧遊ばせご前様、あなたと酷似そっくりの踊り子が、あれあそこで踊っております」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
桟敷の横で大篝が天を焦がして燃えているので、その光に照らされて、踊り子の群はにじのように輝き、瞼毛まつげの先さえ見えそうであったが、なるほど鳰鳥と酷似そっくりの娘が手振り品やかに踊っていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「人違いであった。山吹ではなかった。そうだあなたは葉之助様だ……が、それにしてもあなたのお顔があの山吹に酷似そっくりとは? おお酷似そっくりじゃ酷似じゃ! やっぱりお前は山吹だ! おのれどこからやって来たぞ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「色も艶も酷似そっくりだ。しかしどうも織り方が違う」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(またあのお方が通って行く。……似ている。……いいえ酷似そっくりだ! ……あのお方に相違ない。……では妾はここにはいられぬ。……妾の身分があの人によって。……でもどうしてあのお方がご出家なんかしたのであろう?)
一枚絵の女 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああ酷似そっくりだ! 後ろ姿!」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)