都々一どどいつ)” の例文
若しも一々これを解釈してつまびらかに今日の通俗文に翻訳したらば、婬猥いんわい不潔、聞くに堪えざること俗間の都々一どどいつに等しきものある可し。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
最も恐るべくへたな恋の都々一どどいつなども遠慮なく引用してあった。すべてを総合して、書き手のくろうとであることが、だれの目にもなにより先にまず映る手紙であった。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我は狂歌をもっ俳諧はいかいと『松の葉』所載の小唄こうたならびに後世の川柳せんりゅう都々一どどいつの種類を一括してこれを江戸時代もっぱら庶民の階級にありて発達したる近世俗語体の短詩としてつつあるなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
障れば絶ゆるくもの糸のはかない処を知る人はなかりき、七月十六日のは何処の店にも客人きやくじん入込いりこみて都々一どどいつ端歌はうたの景気よく、菊の井のした座敷にはお店者たなもの五六人寄集まりて調子の外れし紀伊きいくに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たまたま為さざるものあれば一座こぞつてこれをゆ。ここにおいて世に出で人に交らんとするものは日頃ひそか寄席よせに赴き葉唄はうた都々一どどいつ声色こわいろなぞを聞覚えて他日この難関に身を処するの用意をなす。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)