邸跡やしきあと)” の例文
発見といふのは、寺の敷地が伝説通り新田部にたべ親王の邸跡やしきあとに相違なかつたとか、開基の鑑真がんじん和尚が胃病患者だつたとかいふ、そんな無益な問題では無い。
左側に近頃ちかごろ刈り込んだ事のなさそうな生垣を見て右側に広い邸跡やしきあとを大きい松が一本我物顔に占めている赤土の地盤を見ながら、ここからが坂だと思う辺まで来ると、突然勾配こうばいの強い、狭い
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そんなに茶席が建てたければ、茶屋四郎次郎ちややしらうじらう邸跡やしきあとや何かの麦畑でも、もつと買占めて、むやみに囲ひを並べたらよからう。さうしてその茶席ののきがくでも提灯ちやうちんでもべた一面に懸けるがい。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宇賀長者の邸跡やしきあととしては、今、吾川郡あがわぐん浦戸村の南になった外海がいかいに沿うた松原に、宇賀神社と云う村社そんしゃがある。その村社の背後うしろには古墳らしい円錐えんすい形の小丘しょうきゅうもある。土地の人はこれ糠塚様ぬかづかさまと云っている。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)