選択せんたく)” の例文
旧字:選擇
手紙はしばしばもらったが、それもたいてい、新刊書の選択せんたく依頼いらいのついでに、故郷の消息をつたえるといった程度以上のものではなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
連続の方法と意識の内容の変化とが吾人に選択せんたくの範囲を与えます。この範囲が理想を与えます。そうしてこの理想を実現するのを、人生に触れると申します。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仮りに意地汚いじきたない子供があって、どちらのグラスを取った方が利益かと、目を大きくして見比べたとしても、彼はいつまでたっても選択せんたくが出来なかったに相違ない。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少し年老った者は年若い者いわゆる後進者より職業選択せんたくについて相談を受けぬ者はほとんどあるまい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
選挙で代表者を選ぶ場合でも、大衆が選択せんたくの自由を完全に持つということはまれで、一定の組織と手続で制約され、多くはその意思に沿わぬ者を「選ばされる」のである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
で、材料ざいりょう取捨しゅしゃ選択せんたくせめ当然とうぜんわたくし引受ひきうけなければなりませんが、しかし通信つうしん内容ないよう全然ぜんぜん原文げんぶんのままで、私意しいくわへて歪曲わいきょくせしめたような個所かしょはただの一箇所かしょもありません。
それでもみ篶子すずこに送る絵はがきの選択せんたくには銭も時間も惜しくなかった。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かの女のためにいろいろの本を選択せんたくして送ってやっていたことを思い出し、これまでに覚えたことのない、異様なねたましさを覚えたのだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そうしてこの問題の裏面には選択せんたくと云う事が含まれております。ある程度の自由がない以上は、また幾分か選択の余裕がないならばこの問題の出ようはずがない。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おそらく職業の選択せんたく細君さいくんの選択よりもいっそう困難であろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
満足の人間を常に不満足そうに眺める白い眼があった。新らしく結婚した彼ら二人は、彼の接触し得る満足した人間のうちで、得意な代表者として彼から選択せんたくされる恐れがあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに幹部養成のための施設しせつ選択せんたくには、それとなく強い制限が加えられることになり、その結果、残念ながら、友愛塾の志願者もいちじるしく減少するのではないかと予想されます。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
(二)この傾向が選択せんたくを生ずる。(三)選択が理想をはらむ。(四)次にこの理想を実現して意識が特殊なる連続的方向を取る。(五)その結果として意識が分化する、明暸めいりょうになる、統一せられる。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)