のぼ)” の例文
姥捨うばすてかんむりたけを右のほうに見ながら善光寺だいらを千曲川に沿って、二里ばかりかみのぼると、山と山の間、すべてひろい河原地へ出る。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鰍の群れはこの冷たい水を喜んで、底石にまとわりながら上流へのぼってゆく。そのころ瀬をあさる鰍押しの網に入ったものが、一番上等といえるのである。
姫柚子の讃 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
どうも万事がトントン拍子、この風に白帆を張って川上にのぼるのは、なんとも云えませんな。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
三人はまた黙って河上の方へのぼって行った。空はまだ美しく輝いていたが、堤のあちらはもうそろそろ薄暗くなって来た。水の音もだんだんに静かになって来た。丸山は水を指さして、また説明した。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いや、ぐんぐんのぼろう」
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
また早春、奥山の雪が解けて、里川の河原を薄にごりの雪代水で洗うとき、のぼった鰍も決して悪くはない。
姫柚子の讃 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
大阪から京へのぼる三十石船は、夕凪ゆうなぎの明るい川波をって、守口の船着きへ寄っている。ほかの旅客にまじって、潮田、小野寺、武林の三名も、乗りこんだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃、鰍押しの網でったものならば、ほんとうの至味という。また、早春奥山の雪解けて、里川の薄にごりの雪しろ水が河原を洗う時、のぼで漁った鰍も決して悪くない。
冬の鰍 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ここらからはまだ見えませんが、高取山から望みますと、まさに数千そうといえる敵の水軍が、明石と淡路島とのあいだを、魚群のようにのぼってくるのが、あざらかに見られました。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鈎の種類など選ぶ必要はないほど、数多い鮎が下流からのぼってきたのである。
父の俤 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
はやは、利根川の雪代ゆきしろ水を下流から上流へ上流へとのぼってきた。
楢の若葉 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)