逢曳あいび)” の例文
「あれは海苔漉き場だな」と私は笑いながら長に訊いた、「あのころはよく逢曳あいびきに使われたようだが、いまはそんなことはないか」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかも二人の縁は切れないで、お近は柳島へ行った後も寺参りや神詣かみもうでにかこつけて、ひそかに佐藤と逢曳あいびきを続けていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「わかったよ、わかったよ。河豚ふぐ間男まおとこの味は忘れられない。ここで逢曳あいびきするからには、わたしたちだけでいい思いをしているわけはないやね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれは海苔漉き場だな」と私は笑いながら長に訊いた、「あのころはよく逢曳あいびきに使われたようだが、いまはそんなことはないか」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
由来、お寺の“逢曳あいびき”というものは、妙に秘かな春炎と妖情を増すものだった。釈迦しゃかおしえ華厳けごんまじない真言しんごんの秘密。それと本能が闘って燃える。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだの晩、お鉄が両国橋の上をさまよっていたのも、身投げや心中というほどの複雑こみいった問題でもなく、あるいは単に逢曳あいびきの約束をきめて、あすこで男を待ち合わせていたのかも知れない。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「——自分の血を分けた娘と逢曳あいびきをし、さんざんあまいことを云ってくどき、今夜はいっしょに寝ようとしたんですよ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
インキだらけな古畳と膠臭い暗がりの隅で逢曳あいびきの男女のする事が行われていた。たとえぼくの跫音あしおとに気づいても二人は慌てて起きることはなかった。
逢曳あいびきを目的に来る客が少なくないから、たとえ泊らないにしても、それに応じた造りの小座敷や、必要な支度の揃っていることは通例であった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、こんな逢曳あいびきが、世間誰にもわからずに、永続きするはずはなかった。いつしか二人の密会は近所合壁がっぺき私語ささやきとなっていたが、知らぬは亭主の武大ばかり……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水上と土堤との三百メートルの逢曳あいびきは続いていたのだ。むろんずっとではない、どちらかの都合で相当な期間、お互いに姿を見ないこともあった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
水上と土堤との三百メートルの逢曳あいびきは続いていたのだ。むろんずっとではない、どちらかの都合で相当な期間、お互いに姿を見ないこともあった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あの女狐は七日ばかりまえに、桜水の若ぞうと浮気をしやあがった、記事だねを持って来たとき、ちょび髭がいなかったんで、そのまま逢曳あいびき宿へしけ込んだのさ」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「恥をさらすようだが、おれは二人の逢曳あいびきを見た」と忠太は酒を啜ってから続けた
源蔵ヶ原 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「よういろ男」と初めに呼びかけた男が云った、「今夜は三十二号で逢曳あいびきか」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おまけにあたし、たいへんなやきもちやきよ、もしかしてあたしがお師匠さんのおかみさんで、お師匠さんがほかの女とこんな逢曳あいびきなんかしたら、あたし二人とも生かしてはおかないわ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)