追手おいて)” の例文
逡巡しゅんじゅんしていたが、けさ末造が千葉へ立つと云って暇乞いとまごいに来てから、追手おいてを帆にはらませた舟のように、志す岸に向って走る気になった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
鷹狩たちが遠くから、松を離れて、その曠野を、黒雲の走る下に、泥川のように流れてくるに従って、追手おいての風の横吹よこしぶき
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船は追手おいての風でなみの上をすらすらと走って、間もなく大きな大海おおうみ真中まんなかへ出ました。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
元旦がんたんの初日の出を、伊豆いず近海におがみ、青空に神々こうごうしくそびえる富士山を、見かえり見かえり、希望にもえる十六人をのせた龍睡丸りゅうすいまるは、追手おいての風を帆にうけて、南へ南へと進んで行った。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
牧の旦那だんなの家のち船である第一、第二の海竜丸は、この港湾らしい設備はなにひとつ有ってはいない素朴な港に、年に一度か二度、追手おいての風を帆いっぱいにはらませて、上方から帰ってくる。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
「このむきなら、明日あす追手おいてじゃ……」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かぜ追手おいて
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)