“込入(こみい)” の例文
或時期に達した処女が異性を見て好悪(こうお)の情を動かし、進んでは恋愛の感情にまで込入(こみい)るのは、食事や睡眠の欲望と共に自然の要求であって
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
外の込入(こみい)った料理は面倒な代りにアラが知れませんけれどもビフテキの味を出すのが料理人の一番むずかしい仕事です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「勿論(もちろん)これには深い事情がお有んなさるのでせう。ですから込入(こみい)つたお話は承(うけたま)はらんでも宜(よろし)い、但何故(ただなにゆゑ)に貴下方は活(い)きてをられんですか、それだけお聞せ下さい」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
していいかわかりません。いろいろ込入(こみい)ったわけも御在ましたので。一時はどうしたものかと途法にくれましたが、今になって見れば結局この方が気楽で御在ます。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おつむてんてん」などの簡単な遊戯から、「子買お子買お」の如(ごと)き込入(こみい)った演劇に至るまで、一つの行事に一人の児童の携わるのは、精々(せいぜい)一年か二年であります。
よしなっていたって、幼稚にしろ筋は子供の頭より込入(こみい)っているからそう一口に判断を下してやる訳には行かない。それでどうも迷児(まご)つかされる事がたびたび出て来るのです。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、留(と)めても間(ま)に合(あ)はぬ。どや/\と込入(こみい)る見物(けんぶつ)。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
これだけ込入(こみい)ったかつ筋の通った事件は、一人の猟人の作為に出たと思われぬはもちろん、よもや突然の幻覚ではなかろうと思うが、それを確認させるだけの証拠も
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
... 今日拵(こしら)えたら今夜一晩地の上へ置いて明日再び温めて食べるのが一番佳(い)い味になるね」と込入(こみい)りたる手続に客は失望し「そんな面倒な事はとても出来ん。先ず略式から試してみよう」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)