うたた)” の例文
旧字:
読む者をして百年の地上に明滅する種々雑多な人間の浮沈と文化の興亡とを、一巻に偲ばせて、うたた深思しんしの感慨にふけらしめる魅力がある。
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを伝聞した人々は強情我慢の大河原首相をして、この言をさしめた、大陰謀の内容に想到し、うたた肌の寒きを覚えたのである。が、それはのちの御話。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
臨川、春浪、薫、天風、悉くもうこの世の人ではないと思ふと、うたた落莫の感に堪へないものがある。
青春回顧 (新字旧仮名) / 吉井勇(著)
僕は図らずもこの両者に接して、現代の邦家を危くする二つの悪例を目撃し、うたた時難を憂るの念に堪えざる如き思があった。ここに此の贅言を綴った所以である。トデモ言うより外に仕様がない。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
武蔵も、うたた、歳月の思いにたえなかった。——今日の船出が、何となく、人生の一期劃きかくのように思われもして。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「吉川家の臣、うたた小四郎」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父母をばうたた、疎遠にして
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)