はしゃ)” の例文
軽いあっさりした女の調子が、すっかり気に入ってしまって、ばかに愉快であったから、みょうにはしゃいでおそくまで話して帰った。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
藤沢は、その年はどういうものか、ひどくはしゃいでいた。何事にも活溌だった。秋になると、貸し付けてあった食糧費をぴしぴしと取り立てた。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
何も知らない川口は川口で、当分滞在するのだなどと、すっかり無邪気にはしゃいでいますし、私共は大変心配しました。
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
村でも、街道でも、領土の子ども達は、兵馬を見るとこうはしゃいで祝福した。——けれど馬上の将も、足を引き摺って行く兵隊も、みな仮面のような強い顔を黙々と持って
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃のはしゃぎ切った調子に似ず、妙に沈んでいたのは、日頃平次にたてをつくことばかり考えている若くて野心的な岡っ引、大根畠の金太に対する反感ばかりではなかった様子です。
一種のはしゃぎ屋と見えるうちに、どことなく気品が備わっているように思われる十七、八歳の少年兵士で、真黒く日に焼けてはいましたけれども、たしかに貴族の血をけていることが
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
陽気にはしゃげるとしでないことは、自分にもよく解っていた。そのくせ、昔の思い出の中にそれを探し求めたって、彼の思い出には、今宵目のあたりに見るがごとき光景に似寄ったものは何もなかった。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
お安くないなかと知って、みんながわいわい囃すので、銀子も銀行家の座敷へ逃げて来たが、広間で呼ぶ声がしきりに聞こえ、女中も呼ぶので再び出て行き、陽気に三味線しゃみせんなどひいてわざとはしゃいだ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
須山ははしゃいで、何時いつもの茶目を出した。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
最近三月みつき、半年と段々日をるにつれて激しくなって来たが、妙な事にはこのひと月程以前からどうした事かハタと止んで、その代りヘンに甘酢ッぱい子供の様にはしゃいだ声で
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
酒など飲んだ後などはただわけもなく女共にいどみ掛ってははしゃぎ廻る程の男なんですが、それでもD50・444号の無気味な経歴に対しては少からず敬遠——とでも言いますか
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)