踏破とうは)” の例文
「岡部伍長外三名、地下戦車第二号を操縦して、地下七百メートルを踏破とうは、只今帰着きちゃくしました。戦車及び人員、異状なし、おわり」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれど、これでもはやい方であり「よくぞ!」と踏破とうはあとを振返ったことであろう。同時に「ここまで来れば!」の感もあった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
保吉はこうつぶやいたまま、もう一度しみじみ十円札を眺めた。ちょうど昨日きのう踏破とうはしたアルプスを見返えるナポレオンのように。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
故郷を捨て、南京に出て来た事さえ精一ぱいであった自分が、さらに万里を踏破とうはして独逸国に留学するにはどうしたらよいか、まるで雲上の楼閣を望見するが如き思いであった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
六十余州を踏破とうはするの自由は、我らの志を満足せしむる能わざるが故に、我らは五大洲を周遊せんことを願えり、これ我らが宿昔しゅくせきの志願なりき。我らが多年の計策は、一朝にして失敗せり。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そしてようよう、駿遠すんえん山境さんきょう踏破とうはしてきた。もとより旅人たびびともあまり通らぬ道、里数りすうはあまりはかどらない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都は目前だが、同時に足利軍の配備は、これまでに踏破とうはして来た海道戦の比でない。そして、すべて新手の敵だ。その重厚な兵力はまた、いくらでも後備を繰り出すこともしよう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
啓之助がほうっておくと、こんどは、まだ絶巓ぜってんには氷原ひょうげんもあろうというのに、ありの小道まで踏破とうはしゆかねば、阿波守への土産話みやげばなしにならぬといいだして、駄々だだな若公卿の本領を発揮し、さんざんに
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尼ヶ崎の荒木村重あらきむらしげとか、河内の三好下野みよししもつけ、同笑岩入道しょうがんにゅうどうとか、遠くは大和の信貴山しぎさんの多門城に、なお蟠踞ばんきょしている松永弾正久秀などまで、敵地を見やれば、彼が踏破とうはした土地や洛中洛外の面積よりは
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)