足立あだち)” の例文
だからそういう水路は一里も行くうちには相当な川となるわけである。足立あだち郡一帯の川には、こう言う溝を源にしているものが多い。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
塔の沢へ行って見る山のすその雪、青木やすげ足立あだちなどとかつて遊んだことのある若かった日までも想い起させるような早川はやかわの音
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
また今西伊之君の談によると、同国字陀郡の篠楽ささがく足立あだち、また磯城郡の白河しらがなどにも、同じく鬼筋というのがあるという。
「だって毎年年始状を御寄およこしになる足立あだちさんなんか東京で立派にしていらっしゃるじゃありませんか」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
足立あだち屋徳右衞門、腰が低くて如才が無くて、非道な取立てをしないから、金貸しの癖に評判の良い男ですが、夕立の後で、庭へ出て來る蝦蟇がまとそつくりの顏をしてゐる癖に
武芝は武蔵国造むさしのくにのみやつこの後で、足立あだち埼玉さいたま二郡は国中で早く開けたところであり、それから漸く人烟じんえん多くなつて、奥羽への官道の多摩たま郡中の今の府中のあるところに庁が出来たのであるが
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
沼、川、また沼、あしの湿地。曠野の道でいやなものは、水だった。下総の猿島さしまから、武蔵の葛飾かつしか埼玉さいたま足立あだちの方角をとって歩こうとすれば、大河や小さい河は、縦横無尽といっていい。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やかまし屋の支配人足立あだちは、敬二少年を見つけて、名物の雷を一発おとした。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
岸本は灰色な壁のところに立って、その光景をながめていた。その日は岸本の外に、足立あだちすげの二人も弔いにやって来ていた。三人とも亡くなった人の同窓の友だ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
南溟堂なんめいどうへ持って行った時には、有名な人の御序文があればと云うから、それから足立あだちなら大学教授だから、よかろうと思って、足立にたのんだのさ。本も借金と同じ事で保証人がないと駄目だぜ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとその夜早や、足立あだち豊島としま葛飾かつしかなどの近郡から
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青木、市川、すげ足立あだち——それらの友人と互いに青春を競い合うような年頃に、岸本はあの勝子にった。すべてまだ若いさかりの彼に取って心に驚かれることばかりであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうだろうね、足立あだち君は来ないだろうか」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)