貴娘あなた)” の例文
貴娘あなた知らんのならお聞きなさい。頃日このごろの事ですが、今も云った、坂田礼之進氏が、両国行の電車で、百円ばかり攫徒すりられたです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見て彼の旅人は驚きたる樣子にて小聲になり貴娘あなたはお花樣にては無きや如何のわけで此家にと云れてお花は薄暮うすぐらければ面貌おもざしは知れざれど我が名を呼は不審ふしんなりと彼の旅人の顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしそれも大原さん一人の力では隅から隅まで行届く訳に参りません。是非ぜひとも貴娘あなたが内から助けて婦人社会を感化なさらなければ大原さんの功を全くする事が出来ますまい。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
静岡へ参って落着いて、都合が出来ますと、どんな茅屋あばらやの軒へでも、それこそ花だけは綺麗に飾って、歓迎ウェルカムをしますから、貴娘あなた、暑中休暇には、海水浴にいらしって下さい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其方そなたの言分承知したれど、親のゆるしのなくてはならず、母上だに引承ひきうけたまわば何時なんどきにても妻とならん、去ってまず母上に請来こいきたれ)と、かように貴娘あなたが仰せられし、とわたくしより申さむか
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、お掛なさい、そこへ。貴娘あなたのためにならんから、云うのだよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)