貧賤ひんせん)” の例文
元来、劉玄徳は、少年早くより貧賤ひんせんにそだち、その青年期には、各地を流浪し、まだ人間の富貴栄耀えいようの味は知りません。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔譯〕今日の貧賤ひんせん素行そかうする能はずば、乃ち他日の富貴ふうきに、必ず驕泰けうたいならん。今日の富貴ふうき素行そかうする能はずんば、乃ち他日の患難くわんなんに、必ず狼狽らうばいせん。
これによって慰安を得、心のかてを得、もっ貧賤ひんせんたたかい、病苦と闘う勇気を養う事が出来るのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
天下の貧民は悉皆しっかい不平を訴え、富貴はあたかも怨みの府にして、人間の交際は一日も保つべからざるはずなれども、事実においてけっして然らず、いかに貧賤ひんせんなる者にても
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「したともさ。それから現にしつつあるともさ。それが君の余裕にたたられている所以ゆえんだね。僕の最も痛快に感ずるところだね。貧賤ひんせん富貴ふうきに向って復讐ふくしゅうをやってる因果応報いんがおうほうの理だね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富貴の子供でなくてかえって貧賤ひんせんの中から沢山出て居る例もこれまであるのですから、一概に法王あるいは第二の法王まで神下しの勢力を及ぼして、この事を決定することの出来ない場合もある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)