調弄からか)” の例文
何でも御贔屓ごひいきがひにしばゐを見に来たのだが、いつもの気紛れで貞奴さだやつこでも調弄からかはうと思つて楽屋口をくゞつたらしかつた。
こんな事を言つて半ばは調弄からかつてゐる間に、下女は、板の間に買ひ立ての焜爐や鍋などを並べて、自分の鉛筆を削るナイフを持つて玉葱の皮を剥いたりしてゐる。
胡瓜の種 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
キツチナー将軍が首相のアスキスと婦人選挙権と兵役強制法の事を論じてゐると、其処そこへ婦人の訪問客はうもんかくが来て、将軍を調弄からかふ。将軍が蟷螂かまきりのやうにむつとした顔をして
するともう一人の男が、やつ張り前の男に調弄からかはれでもしたと見えて、おこつたやうにその男の名を呼びかけながら、火の消えた提灯を持つて息卷きながら追つかけて來た。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
ある時、同じ銀行の貯金掛りがかう言つて調弄からかふと、給仕は悧巧さうな、くるくるした顔をあげた。
自分は早くこちらへ返つてゐてよかつたと思ひつゝ、鳥を調弄からかひながら立つてゐた。
女の子 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
豊後守といへば、江戸市中に棄児すてごがあれば、屹度拾つて養育した程の慈悲深い男だつたが、それでも時々は剽軽な悪戯いたづらをして、友達を調弄からかふ程の心の余裕ゆとりは持つてゐた。
「受附の隱居を調弄からかつて見て御覽。面白いから。」
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
で、耳を噛んだり、鼻先を押へたり、色々なふざけたふりをして桃太郎に調弄からかつた。
通るものを見さかひもなく調弄からかつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「何だ。画にかいた花だったのか。ひとを調弄からかうのも大概にするがいいや。」
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
剽軽な男は名高い音楽家に調弄からかつた嬉しさに、鼻をくん/\言はせて喜んだ。
ところが、この語学と数学の達人が、音楽と来ては何一つ解らなかつたから可笑をかしい。師匠のド・モルガンは自分が風琴家オルガニストであつただけ、トドハンタアが音楽につんぼなのをよく調弄からかつたものだ。
屹度親父おやぢと叔父貴とが馴れ合つて自分を調弄からかつてゐるのか、さもなければ、二人ともにも知らないくらひぬけの大馬鹿者に相違ないと思つた。で、幾らか冷かし気味に理由わけを話して、訊いてみた。
青邨はいくらか調弄からかはれたやうな気味でさがつて往つた。
娘は幾らか調弄からかひ気味で、平気な顔をして言つた。