しつ)” の例文
「お付きの女房方のため、特にとも寄りへ、小さい板囲いをしつらえおけ。またお座所には夜具よのものも入れ、波除けを忘れるな」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
節句の日暮かっきりに、別の雛段をしつらえて飾り立てる事だったのである。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その見世物は——御承知でもありましょうが——、硝子で水槽を造って、その中に岩だの、海草だのを、ごたごたと配置して、海中らしくしつらえ、そこへ半裸体の海女が、飛込んで鮑を取って来る。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
親子、国色こくしょく、東京のもの、と辰弥は胸に繰り返しつつ浴場へと行きぬ。あとより来るは布袋殿なり。上手かみてに一つ新しくしつらえたる浴室の、右と左のひらとびらを引き開けて、二人はひとしくうちに入りぬ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
大玻璃板だいはりはんしつらえ
所有 (新字新仮名) / 今野大力(著)
諸侯のうちで、城内に、帝座のしつらえてあるのは、わが青葉城があるばかりでござろう。御所の改築の折、古材木をいただいて、遠く船で運んで来たものとか申しまする。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土蔵から道具類の出しれも一仕事だし、懸物かけものの掛け代えとか、茶席のしつらえとか、料理の工夫とか、当日の接待とか、ふつうの閑人ひまじんがやるにしても、並大抵のものではない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)