見窶みすぼ)” の例文
(葬儀人夫立って、下手のバラックの中に入る。やがて見窶みすぼらしい棺桶をかつぎ出す。うしろに主人と男の子、老母出て来る。)
或る別れ (新字新仮名) / 北尾亀男(著)
クレエルの耳輪は、自然に岩にはまつた金粒よりも余計に光りがあるのではない。それとは反対に鉄は最初実に見窶みすぼらしい様子をしてゐる。
どの顔にも歓びと生活のさちが輝いている。自分のごとく懊悩おうのうの陰影をひきずっている者はない。心の見窶みすぼらしさがあの群れの中では目立つ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕方なぞ見窶みすぼらしい平服で散歩するふりをして駐在所を出ると、わざと人目を忍んだ裏山伝いに、丘の上の深良屋敷の近くに忍び寄って、木蔭の暗がりに身を潜めつつ
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一体に食う方にかけては贅沢で、金のある時には洋食だうなぎだとむやみに多量に取寄せて独りで食ってしまうが、身なりはいつでも見窶みすぼらしい風をして、床屋へ行くのは極めて稀である。
まじょりか皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ことにテオドラ嬢の父は元老院議官であったが、英国のセネートアの堂々たる生活ぶりから期待したとは打って変った見窶みすぼらしい生活が意に満たないで、不満のある度に一々英国公使に訴え
また、自分のすがたが——いや心がいかにも見窶みすぼらしく思えてを感じるらしいのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このかんの消息が詳しく素破抜すっぱぬいてありますが、その時に正木先生は、見窶みすぼらしい紋付もんつきはかまの姿で、教授連の拍手に取巻かれながら、頭を抱えて、こんな不平を云われたものです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とにかく、こんな見窶みすぼらしい流転をする幅では決してない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分という者が、こんなに見窶みすぼらしく見えた事はなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)