見栄みば)” の例文
旧字:見榮
それと比べてまじめに丁寧に書いた字で見栄みばえのせぬものも、二度目によく比べて見れば技巧だけで書いた字よりもよく見えるものです。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
身丈高く、肩幅広く、見栄みばえある身体に、薄鼠色の、モーニングコート。せまらず、開かぬ、胸饒かに、雪を欺く、白下衣、同じ色地模様の襟飾り。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
米友が眼をクルクルして群集を見廻した、そのかおつきと身体からだを見て群集はやはり笑わずにはいられません。高札こうさつよりもこの方がよほど見栄みばえがあると思って
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのあいだをまた羽柴筑前守が家中として、見栄みばえの劣らない者どもが、各〻盛装をらし、進物之奉行しんもつのぶぎょうとして、或いは警固や足軽がしらとして、陸続りくぞく山へ登って来る。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の見栄みばえのしない履歴の中で、最も長期間に渡って私を養ってくれた職業は、新聞配達業である。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
座敷でベチャクチャしゃべっていたり踊っていたりしたのでは一向に見栄みばえのしなかった舞妓達が、ダンスホールの群集にまじると、群を圧し、堂々と光彩を放って目立つのである。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
傷える葦! 煙れる亜麻! 性格的にも肉体的にも弱く見栄みばえなき人々がいます。彼らは己の弱いことを知っているから、イエスを信ずることだけを頼りとして生きているのです。
そのような饗宴は、ほの暗い広間や、大きなかしの木の廻廊や、綴織つづれおりを飾った客間にはふさわしいが、現代の別荘の明るい見栄みばえのよい広間や、派手な客室には向いていないのである。
三番目に見栄みばえのしない小躯こがらのお作が、ひょッこりと降りると、その後から、叔父の連合いだという四十ばかりの女が、黒い吾妻あずまコートを着て、「ハイ、御苦労さま。」と軽い東京弁で
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ばかなこと! むき出しにすればいやになるような観念をすべて、彼はすっかり付加形容の言葉で仮装させる。サンソン氏をも見栄みばえよくする。肉切り庖丁を紗の布で包む。跳ね板に色をぼかす。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
彼は手のおそいほうだし、見栄みばえのするような仕事はできなかった。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
行列に参加した人々は皆ぶん相応に美しい装いで身を飾っている中でも高官は高官らしい光を負っていると見えたが、源氏に比べるとだれも見栄みばえがなかったようである。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その自慢(!)の法然頭ほうねんあたまを振り立てるためには、であった方が見栄みばえがする。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)