西陣にしじん)” の例文
祇園ぎおん清水きよみず知恩院ちおんいん金閣寺きんかくじ拝見がいやなら西陣にしじんへ行って、帯か三まいがさねでも見立てるさ。どうだ、あいた口に牡丹餅ぼたもちよりうまい話だろう。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
わたくしは弟といっしょに、西陣にしじん織場おりばにはいりまして、空引そらびきということをいたすことになりました。そのうち弟が病気で働けなくなったのでございます。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
京都西陣にしじんの某と云う商店の主人は、遅い昼飯ひるめしって店の帳場ちょうばに坐っていると電話のベルが鳴った。主人はじぶんって電話口へ出てみると聞き覚えのある声で
長崎の電話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
仙洞御所せんとうごしょの出火のうわさ、その火は西陣にしじんまでの町通りを焼き尽くして天明年度の大火よりも大変だといううわさが、京都方面から伝わって来たのもそのころだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
むかし都の西陣にしじんに、織物職人の家多く、軒をならべておのおの織物の腕を競い家業にはげんでいる中に、徳兵衛とくべえとて、名こそ福徳の人に似ているが、どういうものか
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
京都に着いて三日目に、高尾たかお槇尾まきのお栂尾とがのおから嵐山あらしやまの秋色を愛ずべく、一同車をつらねて上京の姉の家を出た。堀川ほりかわ西陣にしじんをぬけて、坦々たんたんたる白土の道を西へ走る。丹波から吹いて来る風が寒い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
京都の手仕事といえば、すぐ西陣にしじん清水きよみずとの名が想い浮ぶでしょう。前者は織物で、後者は焼物でその名を高めました。仕事の跡を見ますと、技の点では随分進んだもののあるのを見出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
きょうは、西陣にしじん今宮祭いまみやまつり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)