袋小路ふくろこうじ)” の例文
その芝居小屋は、木戸口は往来に面し、楽屋口はその横手の袋小路ふくろこうじを這入った裏側にある。賊は無論楽屋口の方へ走り込んで行った。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは見覚えのある銀座裏の袋小路ふくろこうじ相違そういなかった。彼の立っているのは、カフェ・ドラゴンとおほりとの間にある日本だての二階家の屋根だった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
街灯はまだともされず、ただそこここの家の窓に灯影ほかげがさしはじめたばかりであったが、横町よこちょう袋小路ふくろこうじでは、兵隊や馭者や労働者がわんさといて
ありとあらゆる変化と陰影と濃淡とをもって、昨日よりは今日、今日よりは明日と、どうにも動きのとれない最後の袋小路ふくろこうじへむけて突進していったのです。
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
向い側には緒方正規おがたまさのり氏が前から住んでいられましたが、そこはお広いようでした。その頃郵便局のあった横町から這入はいるので、左へ曲ると行止りになる袋小路ふくろこうじでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
さいわいこのところは、露路裏の、そのまた裏になっている袋小路ふくろこうじのこととて、人通りも無く、このあやしげな振舞ふるまいも、人にとがめられることがなかった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
生憎あいにく私の部屋なるものが、袋小路ふくろこうじ突当つきあたりみたいな部屋でして、どうにも逃げるすきがない。
「あッ、しめた。袋小路ふくろこうじへ入ったぞ。彼奴あいつが、ひっかえしてくるところをおさえるんだッ」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)