-
トップ
>
-
藤枝
>
-
ふぢえだ
(二人は茶碗など片附けてゐる。下手の奧より
藤枝の妹お縫、十八歳、旗本の娘のこしらへにて、中間
角助をつれて出づ。)
聞しや
那の通り女は安五郎が女房男は
藤枝宿の馬士松五郎に
相違も有まじ
斯の如く
明白に
相分りたる上は
眞直に申上よ
僞りを云ば
嚴敷拷問を申付るぞ骨を
籠し櫻山
巡る
麓に風
薫る時は
卯月の末の空花の
藤枝はや過て岡部に續く
宇都の山
蔦の細道
十團子夢か
現にも人にも
遇ぬ宇都の谷と彼の
能因が昔を今に
振も變らぬ梅若葉
鞠子の宿を
なし江戸表にて奉公すべしと
暇乞して出立なし
既に
藤枝より
岡部を