藤村ふじむら)” の例文
かばんから色んなものが出る。山本山やまもとやまの玉露・栄太郎の甘納豆・藤村ふじむら羊羹ようかん玉木屋たまきや佃煮つくだに・薬種一式・遊び道具各種。到れりつくせりだ。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「神戸の蒲鉾かまぼこを三枚、見事なのでございます。それに藤村ふじむら蒸羊羹むしようかんを下さいまして、わたくしまで毎度又頂戴物ちようだいものを致しましたので御座います」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その頃の紅葉はまだ若かったからうれしそうな顔をして、「ありがたいネ、お礼に藤村ふじむら羊羹ようかんでも贈ろうか、」といって笑った。
「この頃はお友達の詩人の藤村ふじむら女史に来て貰って、バロック時代の服飾ふくしょくの研究を始めた」とか「日本のバロック時代の天才彫刻家左甚五郎じんごろう作のねむねこを ...
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
粟餅の立見たちみなどをして遅くなったので、急いで帰ります。その途中藤村ふじむらで、父からの頼みの羊羹ようかんを買いました。藤村は大学の横手にあるよい菓子店です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
この横町が元園町と五番町ごばんちょうとの境で、大通りの角から横町へ折り廻して、長い黒塀くろべいがある。江戸の絵図によると、昔は藤村ふじむらなにがしという旗本の屋敷であったらしい。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ほんとに……あの、藤村ふじむらさんの御宅おたくで校友会のあったあの時お目にかかったきりでしたねえ。」
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いつか藤村ふじむらへ、子供の一番好きな田舎饅頭いなかまんじゅうを買いに往った時、したて物の師匠の内の隣と云うのはこの家だなと思って、見て通ったので、それらしい格子戸の家は分かっている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いやー珍客だね。僕のような狎客こうかくになると苦沙弥くしゃみはとかく粗略にしたがっていかん。何でも苦沙弥のうちへは十年に一遍くらいくるに限る。この菓子はいつもより上等じゃないか」と藤村ふじむら羊羹ようかん
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今は天麩羅屋か何かになってるが、その頃は「いろは」といった坂の曲り角の安汁粉屋しるこや団子だんご藤村ふじむらぐらいに喰えるなぞといって、行くたんびに必ず団子を買って出した。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)