がく)” の例文
彼の指の動き方を伝へてふるへて居る茎の上には花のがくから、蝕んだただ二枚の葉の裏まで、何といふ虫であらう——茎の色そつくりの青さで、実に実に細微な虫
私はまた暫く其処そこで立ち尽した。その墓場には野薔薇が繁つてゐた。折から一段と脊の高い瘠せた茎の頂から、一つの白い花ががくのまゝ音もせずに落ちた。小さな平和の死よ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
がくのいろ雨に浮きたり。呼びそめぬ、ラヂオのニユース、フラン落ち、巴里暴動す、ポアンカレーまた世に出でむ。子らよよし、冷麦ひやむぎ食べむ、実山椒はやつこにつけむ、月待ちがてら。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
果実が落ちるのは、これをささえるがくの根本の力が足りないということだ。僕の理想論は、この支える力がより強くなることだ。より強い蕚にはより重い果実がよりよく熟しつづけるものである。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
木魅こだま山魅すだまかげつて、こゝのみならず、もり廊下らうかくらところとしいへば、ひとみちびくがごとく、あとに、さきに、朦朧もうろうとして、あらはれて、がく角切籠かくきりこ紫陽花あぢさゐ円燈籠まるとうろうかすかあをつらねるのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
がくの船首を空中にたて
季節の馬車 (旧字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
この暑さまだし堪ふべし色褪せてがくあぢさゐはほろほろの花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)