蒼醒あおざ)” の例文
それは色の蒼醒あおざめた恐ろしい顔であった。三左衛門はびっくりしたが、剛胆ごうたんな男であったから何も云わずに僧の顔を見た。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
林田の赤かった顔色が、見る見るうちに蒼醒あおざめて、話が終ると、ひたいのあたりににじた油汗が、大きなしずくとなってトロリと頬をななめあごのあたりへ落ちさがった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
気がついてみると、じっとりと頸筋くびすじのまわりに汗を掻いて、自分ながら顔色の蒼醒あおざめているのがよく分った。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
鳳凰山のあかっちゃけた膚に、蒼黯な偃松が、平ッたくなって、くッついている、うしろには駒ヶ岳が、蒼醒あおざめた顔をしてのぞいている、前には白峰本岳から連続するらしい二枚の連壁が
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
お春は今は蒼醒あおざめて
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
蒼醒あおざめて、純桔梗色に澄みかえる冬の富士を、武蔵野平原から眺めた人は、甲府平原またはその附近の高台地から白峰の三山が、天外に碧い空を抜いて、劃然かっきりと、白銀の玉座を高く据えたのを見て
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)