ひる)” の例文
麻野には麻をき、蚕時こどきには桑子くわこを飼う。——もし鯛が手に入ったらひると一しょにひしお酢にし即座の珍味に客に供する。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なぜかというと草薬のひるなるものの臭気がいっぱいなんですから、私は逃げて出る方角を考えながら
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
魚鳥に七箇日の忌のそうろうなる事。さもや候らん。えみ及ばず候。地体はいきとしいけるものは。過去の父母にて候なれば。くうべき事にては候わず。又臨終には。酒魚鳥そうかいひるなどは。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いざ児ども野蒜ぬびるつみにひるつみに」とあるし、万葉の、「いざ子ども大和へ早く白菅の真野まぬ榛原はりはら手折りて行かむ」(巻三・二八〇)は、高市黒人の歌だから憶良の歌に前行している。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここにすなはちそののこりのひるの片端もちて、待ち打ちたまへば、その目にあたりて、打ち殺しつ。かれその坂に登り立ちて、三たび歎かして詔りたまひしく、「吾嬬あづまはや」と詔りたまひき。
『日本紀』七に、日本武尊信濃の山中で山神の化けた白鹿に苦しめられたが、ひるを以てこれを殺し、道を失うてくるしむ時白犬に導かれて美濃にづ、とあれば、同じ白でも鹿は悪く犬は善いと見える。
ひるみにわたしの行く道の
ひる摘みに わが行く道の