葉尖はさき)” の例文
葉尖はさきにすくすくと針を持って、なめらかに開いていたのが、今蟻を取って上へ落すと、あたかも意識したように、静々と針を集めて、見る見る内に蟻をとりこにしたのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これにぞ、気を得て、返す刀、列位の黒道人くろどうじん切附きりつけると、がさりと葉尖はさきから崩れて来て、蚊帳を畳んだように落ちる。同時に前へ壁をいて、すっくと立つ青仙人を、腰車にって落す。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この姿は、むぐらを分けて忍び寄ったはじめから、目前めさき朦朧もうろうと映ったのであったが、立って丈長き葉に添うようでもあり、寝て根をくぐるようでもあるし、浮き上って葉尖はさきを渡るようでもあった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いたづらたるものは金坊きんぼうである。初めは稗蒔ひえまきひえの、月代さかやきのやうに素直にこまかく伸びた葉尖はさきを、フツ/\と吹いたり、ろうたけた顔を斜めにして、金魚鉢きんぎょばちの金魚の目を、左から、又右の方からながめたり。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)