菅公かんこう)” の例文
菅公かんこうが幽霊となって、時平ときひらのところへ化けて出るところをかいた、天神縁起えんぎの菅公の幽霊は、生前の菅公をそのままにかいてある。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
何だか狐にでもつままれたような気がする。あの夕立は単に僕達の旅程から菅公かんこう配所はいしょを取りける為めの天意としか思われない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小生なども我は有用の人物なり、しかるにたくせられ居るを苦にせず屈せぬは、忠義なる菅公かんこうが君をうらまぬと同じく、名誉なりと思はば思はるべく候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
これも隣りの黒袴くろばかまという村に、菅公かんこうを祀った鎮守の社があって、前からその村と仲が悪かったゆえに、こういう想像をしたのではないかと思います。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼にはまさしく伯父に当る高齢の人を、うやまいいたわるのに不思議はないようなものだけれども、菅公かんこうを失脚せしめて以来、ひとしお態度が驕慢になって
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
芳年は王政復古の思想に迎合すべく菅公かんこう楠公なんこう等の歴史画をいだして自家の地位を上げたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
は、かの菅公かんこう
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
此の左大臣が有為ゆういの材を抱いて早死はやじにをしたのは、積る悪業の報いであるように当時の人々は見たのであるが、就中なかんずくその報いの最たるものは、菅公かんこう怨霊おんりょうたたりであるとされたのであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
高さは五尺ばかり、周りに垣をして大切にしてありますが、これは昔菅公かんこう筑紫つくしに流された時、度会春彦わたらいのはるひこという人が送って行って、帰りに播州ばんしゅうの袖の浦という所で、拾って来たさざれ石でありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)