莫逆ばくげき)” の例文
緑雨の竹馬の友たる上田博士も緑雨の第一の知己なる坪内博士も参列し、緑雨の最も莫逆ばくげきを許した幸田露伴が最も悲痛なる祭文を読んだ。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
先生の親友しんゆう高橋順益たかはしじゅんえきという医師いしあり。いたっ莫逆ばくげきにして管鮑かんぽうただならず。いつも二人あいともないて予が家に来り、たがいあい調謔ちょうぎゃくして旁人ぼうじんを笑わしめたり。
大沼枕山が孤剣飄然ひょうぜんとして江戸に帰るや否やたちまちにして莫逆ばくげきの友を得たのは重に星巌が吟社の席上においてである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
父の莫逆ばくげきの友だつた市島春城翁、政治上の同輩だつた町田忠治といふやうな人の話に、長男のことを常に呉々くれぐれも頼んでをり、又、長男のことを非常によく話題にして
石の思ひ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
本当に朋友になって共々に心事を語る所謂いわゆる莫逆ばくげきの友と云うような人は一人もない、世間にないのみならず親類中にもない、といって私が偏窟へんくつ者で人と交際が出来ないと云うではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
父の莫逆ばくげきの友だった市島春城いちしましゅんじょう翁、政治上の同輩だった町田忠治というような人の話に、長男のことを常に呉々くれぐれも頼んでおり、又、長男のことを非常によく話題にして
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その頃高谷塾以来の莫逆ばくげきたる西源四郎も同じ語学校の支那語科に在籍していたので、西は当時の露語科の教師古川常一郎の義弟であったからなお更益々ますます交誼を厚くした。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
二葉亭は『浮雲』以後全く韜晦とうかいしてこの文壇の気運を白眼冷視し、一時莫逆ばくげきを結んだ逍遥とも音信を絶していたが、丁度その頃より少し以前、逍遥と二葉亭とは偶然私の家で邂逅かいこうして久闊きゅうかつを叙し
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)