茸狩きのこがり)” の例文
もっともこうした山だから、草を分け、いばらを払えば、大抵どの谷戸やとからもじることが出来る……その山懐やまふところ掻分かきわけて、茸狩きのこがりをして遊ぶ。但しそれには時節がやや遅い。
いつの日にか、わたくしは再び妙林寺の松山にとんびの鳴声をきき得るのであろう。今ごろ備中総社びっちゅうそうじゃの町の人たちは裏山の茸狩きのこがりに、秋晴の日の短きをなげいているにちがいない。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それからまた三四年の後、母と弟二人と茸狩きのこがりに行ったことがある。遠くから常に見ている小山であったが、山の向うの谷に暗いさびしい池があって、しばらくその岸へりて休んだ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
蘆葦茅草ろいぼうそうが枯れ枯れにくさむらをなしているところ、それが全くれて石ころのうずたかいところ、その間を、茸狩きのこがりか、潮干狩でもするような気分で、うかうかと屈伸しながら歩んで行くと、当然
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あるいはわらび取り、あるいは茸狩きのこがりに、城下近い山へ行くこともあった。山の上で弁当を食うことは宜かったが、茨にかき裂かれなどして茸など取ることは、私には唯面倒な事としか思えなかった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
円髷まるまげもあろうし、島田もあろうし、桃の枝を提げたのも、藤山吹を手折ったのも、また草籠くさかご背負しょったのも、茸狩きのこがりねえさんかぶりも、それは種々さまざま、時々だというけれど、いつも声がして