茶盆ちゃぼん)” の例文
と、ようやく、全姿ぜんしをせまい土間に見せて、そこへ茶盆ちゃぼん土瓶どびんの湯をおくと、もうあわてて帰ろうとした。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お茶召しあがりませ」と言いながら、名物葛餅くずもちの皿と茶盆ちゃぼんとを縁台の端に置いて行った。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
そこで茶の好きな人は玉露ぎょくろなど入れて、茶盆ちゃぼんそばに置いて茶を飲んでいても、相手が二段引きの鯛ですから、慣れてくればしずかに茶碗を下に置いて、そうして釣っていられる。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
特に形においてそうでありました。私の家では今も茶盆ちゃぼんを日々愛用して離しません。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
由蔵の部屋から釜場かまばへと梯子はしごを降りている時、赤羽主任は、奥の居間から、湯屋の女房が茶盆ちゃぼんを持って出て来るのを見た。と、同時に、彼は、ハッタと、忘れていた或事に気がついた。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其れから衛生委員えいせいいいんの選挙、消防長の選挙がある。テーブルが持ち出される。茶盆ちゃぼんで集めた投票とうひょうを、咽仏のどぼとけの大きいジャ/\ごえの仁左衛門さんと、むッつり顔の敬吉けいきちさんと立って投票の結果を披露ひろうする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きました。するとおばあさんは、お茶盆ちゃぼんを手にったまま
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
様々な塗物が出来ますが、特に珍らしいのは茶盆ちゃぼんの類で、足附のものや、ごく低い巾広のふちを持ったものなどは沖縄だけのものであります。箪笥たんすも特色のある美しい溜塗ためぬりのがあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ここの細君は今はもう暗雲を一掃いっそうされてしまって、そこは女だ、ただもう喜びと安心とを心配の代りに得て、大風たいふういた後の心持で、主客の間の茶盆ちゃぼんの位置をちょっと直しながら、軽くかしらを下げて
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)