花香かこう)” の例文
いったい日本人は花のにおいに冷淡れいたんで、あまり興味をかないようだが、西洋人と中国人とはこれに反して非常に花香かこう尊重そんちょうする。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
こうとして一人みずからたたずむ時に花香かこう風に和し月光げっこう水に浮ぶ、これが俳諧の郷なり(略)
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
おこゝろざしのほど忝く存じますけれども、かようになりはてゝ何を花香かこうと世にながらえましょう、たゞ討死をとげるつもりでござりますから、御前ごぜんへよきなにお伝え下されと仰っしゃって
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして見たところなんの醜悪しゅうあくなところは一点もこれなく、まったく美点にちている。まず花弁かべんの色がわが眼をきつける、花香かこうがわが鼻をつ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ユリの花はいちじるしい虫媒花ちゅうばいかで、主として蝶々ちょうちょうが花を目当めあてに頻々ひんぴんと訪問する常得意じょうとくいである。それで美麗びれい花色かしょくが虫を呼ぶ看板かんばんとなっており、その花香かこうもまた虫をさそう一つの手引てびきをつとめている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)