芝居町しばいまち)” の例文
こうして、築地橋から北の大通りにわたるこの一町内はすべて歌舞伎の夢の世界で、いわゆる芝居町しばいまちの空気につつまれている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると丁度その辺は去年の十月火災にかかった堺町さかいちょう葺屋町ふきやちょう替地かえちになった処とて、ここに新しい芝居町しばいまちは早くも七分通しちぶどおり普請を終えた有様である。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
馬道から芝居町しばいまちへ抜けるところへ、藪の麦とろがあり、その先の細い横丁が楽屋新道がくやしんみちで、次の横丁が芝居町となる。猿若町は三丁目まであってにぎわいました。
吾人は豊春の浮絵において安永時代の芝居町しばいまち並に各座劇場内の光景をうかがふに当りてここにまた北尾重政きたおしげまさの描ける絵本をも一見せざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
顧れば十幾年まえ芝居町しばいまちなぞでく見た折の金四郎と今日こんにちの左衛門尉とを思い比べると実に不思議な心持になる。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こうなるからは誰ぞ公辺こうへん知人しりびとを頼り内々ないない事情を聞くにくはないとかね芝居町しばいまちなぞではことほか懇意にした遠山金四郎とおやまきんしろうという旗本の放蕩児ほうとうじが、いつか家督をついで左衛門尉景元さえもんのじょうかげもとと名乗り
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)