艶然えんぜん)” の例文
彼女はまた斜交いにこっちをじいっと見て、その艶然えんぜんたるながしめのまま盃を唇へもっていった。さすがに辰巳の姐さんである。
ゆうれい貸屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
艶然えんぜんとして微笑みながら、舞衣姿まいすがたのまま酌をしようとするお春を後目しりめにかけて、呉羽之介は不機嫌に、震える声で言うのでした。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それは波間なみまに一台の黄金こがねづくりの車があって、その上に裸体らたいの美の女神ヴィーナスが髪をくしけずりながら艶然えんぜんと笑っているのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その霧の中に、チラ/\と時折、瞥見べっけんするものは、半面紫色になった青年の死顔と、艶然えんぜんたる微笑を含んだ夫人の皎玉こうぎょくごとき美観とであった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「あら、おかえり。」と艶然えんぜんと笑って出迎えたのは、ああ、驚くべし、竹青ではないか。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「まあ、うれしい。」とミサコは艶然えんぜんとわらうと
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
いつか江戸の芝でつかまって、「和幸」へ伴れてゆかれたときに、かよは艶然えんぜんと笑いながら云った。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ふりかえってみると、さくらぼうのような例の女は、白い腕をしなやかに辻永の腰に廻して艶然えんぜんと笑っていた。そして二人の姿は吸いこまれるように格子こうしの中に消えてしまった。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お春は楚々そそとして艶然えんぜんたる立姿を紅燈に照させながら、静かに唄いつ舞うのでした。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
かよは艶然えんぜんと微笑した。つなはその顔を冷やかに、黙ったまま見返した。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かよは艶然えんぜんと笑った。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)