船戦ふないくさ)” の例文
広言のようですが、この孔明は、水上の船戦ふないくさ、馬上の騎兵戦、輸車戦車の合戦、歩卒銃手の平野戦、いずれにおいても、その妙を
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
オラーフ・トリーグヴェスソンが武運つたなく最後を遂げる船戦ふないくさの条は、なんとなく屋島やしまだんうらいくさに似通っていた。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あのアントニーがオクタヴィアヌスの軍勢を迎えてナイルの河上で船戦ふないくさをする、と、アントニーに附いて来たクレオパトラは、味方の形勢が非なりとみるや
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうかして左手ばかりの練習をしているのを幾間いくまか隔てたとこの中で聞いていると、不思議に前の書中の幻影が頭の中によみがえって来て船戦ふないくさの光景や
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし、親船のともにいる妃たちには、彼の声も救いには思えない。——いまにも船戦ふないくさか、とおののいている姿だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし一夜を、西行法師にまねて、ここに腰かけていたら、船戦ふないくさの矢たけびも聞こえ、一門の紅旗や楯や弓のむらがりが、暁の雲間にげんじて来るかもしれない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この美しい音楽の波は、私が読んでいる千年前の船戦ふないくさの幻像の背景のようになって絶え間なくつづいて行った。音が上がって行く時に私の感情は緊張して戦の波も高まって行った。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
海面で岩松の船手が、敵の大船列へ突ッこんで、元寇げんこうえきさながらの船戦ふないくさを展開して、いくぶんの牽制けんせいはしていたものの、ここの干潟合戦ひがたがっせん咆哮ほうこうは、いつ果てるともみえない死闘の揉み合いだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)