脛巾はばき)” の例文
(砧の音。おいよは桶を持ちて井戸ばたへ水を汲みに出る。弥三郎は縁に腰をかけて、藁の脛巾はばきを解き、草鞋わらじをぬぐ。奥よりお妙出づ。)
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
脛巾はばき脱ぎは恐らく砂払いからの再転で、人が神事から人事に移って行く際にも、何かその境目をはっきりとさせる必要があることを意味したものらしい。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
柿いろの笹袿ささがけに、黒い脛巾はばき穿いて、頭には兜巾ときんを当て、足には八ツ目の草鞋わらじをきびしく固めている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紺の脛巾はばきに紺の股引き、紺の腹掛けに紺の半被はっぴ、紺の手甲てっこうに紺の手拭い、一切合切紺ずくめ、腰に竹細工の魚籃びくを下げ、手に手鉤を持っている。草鞋わらじの紐さえ紺である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もとより脛巾はばき足袋たび藁沓わらぐつなどは申すに及びません。これが野良のらで働く出立いでたちであります。京の大原女おはらめは名が響きますが、御明神の風俗はそれにも増して鮮かなものであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
これや名代なだい大原女おはらめ、木綿小紋に黒掛襟の着物、昔ゆかしい御所染の細帯、物を載せた頭に房手拭、かいがいしくからげた裾の下から白腰巻、黒の手甲に前合せ脛巾はばきいやしからず
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老いては冬の孔雀守る、 蒲の脛巾はばきとかはごろも
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
われわれの母たちが皆脛巾はばきを省き、足にまつわるいわゆる脚布きゃふばかりで暮らしていたとしたなら、とくの昔に手足は饅頭まんじゅうのごとく柔らかくなって、とうてい朝比奈三郎や加藤虎之助は
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それへ赤鞏あかざやの刀を差し、脚には黒の脛巾はばきを穿き、しかも足は跣足はだしであった。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)