胴金どうがね)” の例文
「井戸端には血を洗った跡もあるが、この曲者くせものは証拠をバラき過ぎるようだ。それに槍の穂だけ濡れて、胴金どうがねの下からへかけて少しも濡れていなかったようだな」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
くだんの武士は縁台に腰を下ろしていたが、頭にいただいた竹皮笠たけかわがさは取らず、細く胴金どうがねを入れた大刀を取ってわきに置き、伏目ふしめになったかおを笠の下からのぞくと、沈みきった色。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と云う声はこだまに響きます、うしろ三峰堂みみねどうの中に雨止あまやみをしていた行脚あんぎゃ旅僧たびそう、今一人は供と見えてすげの深い三度笠さんどうがさに廻し合羽で、柄前つかまえへ皮を巻いて、鉄拵てつごしらえの胴金どうがねに手を掛け
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
武「金がなければ気の毒だがして居る胴金どうがねから煙草入から身ぐるみ脱いで行って貰いい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
喧嘩の相手の文治郎のどてっ腹をえぐらなければならんと云うので胴金どうがね造りの脇差を差して直ぐにこうと思ったが、そんな乱暴の男でも親の事が気に掛ると見えまして、うちへ帰って見ると
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云われこの時は永禪和尚もこれは隠悪ぼくれたわい、もう是れまでと思ってじゞばゞあを切殺して逃げるよりほかはないと、道中差どうちゅうざし胴金どうがねを膝の元へ引寄せて半身構えに成って坐り、居合いあいで抜く了簡
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)