肌衣はだぎ)” の例文
その中には菓子とか、蒲焼かばやきやすしの折詰とか、肌衣はだぎや下帯などが入っていたが、栄二はそれらを惜しげもなく、まわりの者に配ってしまった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
是が旅館の番頭などなら、メリヤスの肌衣はだぎ一つでまっぴら御免下さいと、夜具の上げおろしまでもするか知らぬが、普通の人情ではそれは忍べない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
車夫は白い肌衣はだぎ一枚のもあれば、上半身全く裸裎らていにしているのもある。手拭てぬぐいで体をいて絞っているのを見れば、汗はざっと音を立てて地上にそそぐ。
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
誰ひとり、彼が花壇を飛び越え、花を鷲掴わしづかみにして、いそいで胸の肌衣はだぎの下にかくしたのを見たものはなかった。
そしてこんどは、暗い肌衣はだぎをした蝙蝠こうもり色の瞳をした女が、はりがねの上をつるつるすべっていた。
ヒッポドロム (新字新仮名) / 室生犀星(著)
自分の生活や人の生活を暗澹あんたんとしたものにはしない。良人と別居することや、弁当屋から飯を取ることや、肌衣はだぎを洗濯屋へ出すことで、女の仕事がどんどん運ぶのだったら、私も真似をしたい。
平凡な女 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「やあ、猿。肌衣はだぎが汗くさくなった。洗っておいてくれ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
肥えたるからだに肌衣はだぎを着け
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)