肉薄にくはく)” の例文
「続いて、果敢かかんなる日本潜水艦隊が肉薄にくはくして、数十本の魚雷を本艦の横腹よこばら目がけて猛然と発射するときは……」
「六時に立てる位な早起はやおきの男なら、今時分じぶんわざわざ青山あをやまからつてやしない」と云つた。改めて用事を聞いて見ると、矢張り予想のとほ肉薄にくはくの遂行に過ぎなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから——それからは未曾有みぞうの激戦である。硝煙しょうえんは見る見る山をなし、敵の砲弾は雨のように彼等のまわりへ爆発した。しかしかたは勇敢にじりじり敵陣へ肉薄にくはくした。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
としていた麾下きかである。先を争って、城壁へ肉薄にくはくした。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すきがあったら飛び込もうとして、この間からねらいを付けていた彼は、何時まで待っても際限がないとでも思ったものか、機会のあるなしに頓着とんじゃくなく、ついに健三に肉薄にくはくし始めた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)