聲色こわいろ)” の例文
新字:声色
殊に先々代の女將おかみは聲が美しく、天滿てんま村のきりぎりすと呼ばれて、村の老人としよりの中には今でも其の美しい聲色こわいろをつかふものがある。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一寸法師の玉六だよ、あの一寸法師は物眞似聲色こわいろの名人だ。衝立の蔭にもう一つの道化のかみしもをチラ付かせて、玉吉の聲色で歌つてゐたんだ。
せしに相違なしと思ひければ夫より三井寺の辨慶は長屋中を觸歩行ふれあるきしに仲間なる丹波の荒熊あらくま又は皿廻さらまはからす聲色こわいろつかひなど皆々此浪宅へ來り樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
麗かな春日をぽか/\と浴び乍ら、信州訛で、やれ福助が、やれ菊五郎が、などと役者の聲色こわいろや身振りを眞似て、賑かな芝居の話しで持切りだつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
休憩時間になると、聲色こわいろをつかつてそれを生徒たちへ説明してやつた。そんな漫畫をかいた手帖が四五册もたまつた。机に頬杖ついて教室の外の景色をぼんやり眺めて一時間を過すこともあつた。
思ひ出 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
恐らく何處かの野良犬が、この界隈で餌をあさつて居るか、街の不良よたもの共が、狼の聲色こわいろでも使つて、女子供を脅かして居るんだらうと思つたのです。
背負せおひて一文貰ひの辨慶或は一人角力すまふの關取からす聲色こわいろ何れも乞食渡世の仲間なかまにて是等の類皆々長屋づきあひなれども流石さすが大橋文右衞門は零落れいらくしても以前は越後家にて五百石取の物頭役なれば只今市之丞の長八に對面たいめんなすにきつと状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「喜八郎と入れかはつたのだよ、喜八郎は百人町の百兵衞のところにとまつて、俺は此處へ戻つて來たまでのこと、喜八郎の聲色こわいろを使ふのに骨を折つたぞ」
女が男の聲色こわいろを使ふのはむづかしいが、男が女の聲色を使ふのは、世間でも少なくない。まして自分の女房の聲色くらゐは、竹松には何んでもない隱し藝だ
聲色こわいろまでたくみだつたので、喧嘩別れした亭主——矢の根五郎吉に變裝へんさうして、御用金二千兩を盜み出したと見せかけ、怨みのある五郎吉を刑死けいしさせたのです。
ところがお鳥の前身は見世物の力業ちからわざの太夫だ。その上聲色こわいろの名人と知れて、何も彼もわかつたよ。
金兵衞が敬太郎の聲色こわいろを遣つてお茂世さんをおびき出したのさ——金兵衞は藝人崩れで、聲色こわいろがうまいと言つたのを知つてるだらう——、敬太郎に呼出されたつもりで
もつとも何んかの時鼻唄位はやりますが、ちよいとさびのある良い聲で、——それに物眞似ものまねが上手ですよ、お隣の御浪人の眞似や三河屋の若旦那の聲色こわいろなんか、そつくりその儘で
狩屋三郎の聲色こわいろ位は使つたかも知れない。お照はそれをてつきり、狩屋三郎と思ひ込んで三階へ引入れたが、月の光に、狩屋三郎でないとわかると、驚いて逃出さうとした。
女形の聲色こわいろをよく使ひ、お六は三味線の達者ですが、膽つ玉は竹松より遙かに太く、二人はよく夫婦喧嘩をしながらも、お互に弱い尻を握つてゐるらしく、いがみ合ひながらも
口上言ひの外物眞似が上手で、役者の聲色こわいろや、人の口眞似などは堂に入つた藝でした。
ガラツ八はお徳の聲色こわいろまで使つて聞かせました。縁臺の上で、菊の香りにひたり乍ら、二つ三つはお徳にグリグリをやられたのでせう、何しろ、その熱心さは一と通りのことではありません。
「あゝびつくりするぢやないか。聲色こわいろに身が入り過ぎるよ」
八五郎の話は少し聲色こわいろになりました。
「いきなり泣き出した聲色こわいろで」
八五郎の報告は聲色こわいろ入りです。
「あの聲色こわいろですよ」
「娘と若衆の聲色こわいろ