聊斎志異りょうさいしい)” の例文
宋朝以来南支那に盛んな五通神は、家畜の精が丈夫に化けてにわかに人家に押し入り、美婦を強辱するのだ(『聊斎志異りょうさいしい』四)。
剪燈新話せんとうしんわ聊斎志異りょうさいしいがひろく読まれている国だから、こういう想像説も生れて来そうなことさ。相手がいよいよ幽霊ときまれば、どうにも仕様がない。
女侠伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蒲留仙はこうして旅人を待っていて、茶を勧め、淡巴菰をまして、牛鬼蛇神ぎゅうきじゃしんの珍らしい話をさせ、それを「聊斎志異りょうさいしい」の材料にしているところである。
酒虫しゅちゅうは材料を聊斎志異りょうさいしいからとった。もとの話とほとんど変わったところはない。(新思潮第四号)
校正後に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
馬に食わせいほどの金を持って居る江島屋宗三郎は、根岸の寮の雪の一日を籠って、唐本の「聊斎志異りょうさいしい」を読みふけながら、んな途方もないことを考えているのでした。
猟色の果 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私は聊斎志異りょうさいしいの中の一つの物語を骨子こっしとして、大いに私の勝手な空想を按配あんばいし、「清貧譚せいひんたん」という短篇たんぺん小説に仕上げて、この「新潮」の新年号に載せさせてもらった事があるけれども
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
聊斎志異りょうさいしい」の中には、到るところに狐の化けたと称する女性が現われて来る。しかし、多くの場合に、それはみずから狐であると告白するだけで、ついに狐の姿を現わさずにすむのが多い。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
江戸時代の怪談にはかの『聊斎志異りょうさいしい』を始めとして、『池北偶談』や『子不語』や『閲微草堂筆記』などの系統を引いているものは殆ど見られないようである。
妖怪漫談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まして左右に居流れた、判官らしい像になると、——或は正面に端坐した城隍らしい像になると、殆聊斎志異りょうさいしいだとか、新斉諧しんさいかいだとかと云う書物の挿画を見るのと変りはない。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
要するに六朝小説は支那しな文学の源泉で、それが小説になり、戯曲になり、詩になり、その流れは『捜神記そうしんき』『剪燈新話』『西湖佳話』『聊斎志異りょうさいしい』というような怪譚小説になった。
怪譚小説の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただし、当局はその真相を疑い、目下犯人厳探中の由なれども、諸城しょじょう某甲ぼうこうが首の落ちたる事は、載せて聊斎志異りょうさいしいにもあれば、がい何小二の如きも、その事なしとは云うべからざるか。云々。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
聊斎志異りょうさいしい水莽草すいもうそうとは違って、この幽霊藻は毒草ではないということだ。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)