耳障みみざわ)” の例文
ところが、その乱暴ないい分が、あの叔母さんの平気な口から出ると、耳障みみざわりに聞えないのが不思議のように思われてなりません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、呻吟うめきがしだいに耳障みみざわりになってしようがない。猫を追いだすようにこの睡眠の邪魔物じゃまものを遠ざけるわけには行かない。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
また、その発声の源にあるものは愛情と善意だけなので、それがこちらの耳障みみざわりになるようなことは、少しもない。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
さすが、これは耳障みみざわりであったらしい。鷹野姿の公卿は、せっかくの読書を止め、それをふところに仕舞うと、自分の方から無頼の仲間へ呼びかけた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別に耳障みみざわりしないのみならず、一首に三つも固有名詞を入れている点なども、大胆だいたんなわざだが、作者はただ心のままにそれを実行してごうもこだわることがない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「美人の裸体らたいは好い、然しこれに彩衣さいいせると尚美しい。梁川は永遠の真理を趣味滴る如き文章に述べた」などの語があった。梁川、梁川がやゝ耳障みみざわりであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
津田から見たお秀は彼に対する僻見へきけんで武装されていた。ことに最後の攻撃は誤解その物の活動に過ぎなかった。彼には「嫂さん、嫂さん」を繰り返す妹の声がいかにも耳障みみざわりであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな会話を交わしながら、古碑でも探る気持で、燈台の石垣を撫でまわしているのが、この際、お銀様の耳障みみざわりになりました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんなことを謡の文句で呼びかけるものだから、どうしても舟の連中の耳障みみざわりにならないわけにはゆきません。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)