老実まめ)” の例文
旧字:老實
且つその身体をてもせず、老実まめやかに、しんせつにあしらうのが、何か我ながら、身だしなみよく、ゆかしく、優しく、嬉しいように感じたくらい。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうお出懸けだ、いや、よく老実まめに廻ることだ。はははは作平さん、まあ、話しなせえ、誰も居ねえ、何ならこっちへ上って炬燵こたつに当ってよ、その障子を
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さて出口でぐちから、裏山のそのじゃ矢倉やぐらを案内しよう、と老実まめやかに勧めたけれども、この際、観音かんおん御堂みどう背後うしろへ通り越す心持こころもちはしなかったので、挨拶あいさつ後日ごじつを期して、散策子は
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母上のたまいたる梨の、しんばかりになりしを地に棄てしを見て、彼処かしこの継母眉をひそめ、その重宝なるもの投ぐることかは、りおろして汁をこそ飲むべけれと、老実まめだちてわれに言えりしことあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女乞食の掘出しもの、恩に感じて老実まめ々々しく、陰陽かげひなたなく立働き、水もめば、米もぎ、御膳ごぜんも炊けば、お針の手も利き、仲働なかばたらきから勝手の事、拭掃除まで一人で背負しょって、いささかも骨をおしまず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)