ひら)” の例文
旧字:
白の洋装で髪をお垂下さげにし、丈の長い淡紅とき色のリボンをひらめかしながら力漕をつづけているのは、まごうかたなく彼の少女であッた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
地味ちみの痩せをそのまま姿にしているひょろ長い松だ。——その木陰に、ちらと、猩々緋しょうじょうひ袖無そでなし羽織のすそがひらめいていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳥羽伏見で、敵方に錦旗がひらめくと同時に、味方の足が浮いていつとなく総崩れとなり、淀の堤を退去したとき、彼はいつの間にか味方の諸隊と離れていた。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
裾をひらめかすと燃え立つ蹴出しだ、火焔が立つかと思ったが、弁天松代ちゃアんと乗った。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、久助の膝へむかって、ぽんと投げ与え、ひら——と人浪のうちへ隠れ去ってしまった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひら——と、武蔵の身が、そのみよしへ跳び移った時である。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)