翻筋斗もんどり)” の例文
旧字:飜筋斗
言葉に連れて地に倒れていた猿が、毬のように飛び上り、宙で二三度翻筋斗もんどりを打ったが、やがて地に坐り手を膝へ置いた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
同時に、馬春堂もまた、賽銭箱に立ててあった蝋燭へ手をついて、コロコロと突ンのめるなり前へ翻筋斗もんどり打ったらしく
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は逆立ちして、人生をひっくり返し、翻筋斗もんどりして、人生をびっくりさせ、卒倒して、人生を気絶させた。今度は、首を吊って人生の息の根を止めてやることだ。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
彼のからだは木の株や土くれの上を翻筋斗もんどりうつて、まつさかさまに断崖を転げ落ちて行つた。
直ぐその下を私が通りがかりつつある一八〇〇年代の建造らしい南欧風洋館のすたれた大露台の欄干では、今、一匹の印度インド猿が緋のチョッキを着、四本の肢で一つ翻筋斗もんどりうった。
長崎の一瞥 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
渠は自暴糞やけくそに足を下駄に突懸けたが、下駄は翻筋斗もんどりを打つて三尺許り彼方むかうに転んだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
物に驚いて、逸走の動作に移るとき、からだをそのまま、トンボ返りというのか、角兵衛の翻筋斗もんどりというのか、情勢に支配されないでうしろへくるりとまわり、勢い込めて逃げるからだ。
蜻蛉返り (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
往来もとまりますと、戸ヶ崎の小僧弁天堂の裏手の草の茂みからごそ/\とあしを分けながら出て来た新吉は、ものをもいわず突然いきなり與助の腰を突きましたからたまりません、與助は翻筋斗もんどりを打って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
北公 (川の中へ翻筋斗もんどり打って落つ)
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)