羽摶はばた)” の例文
青味を帯びた鳥がちょっとおどろいたように羽摶はばたいて飛び立ったが、すぐ他の枝に移ったままかえって私に挑みでもするように、再びギャッ、ギャッと啼き立てた。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
暗中の人影が蔵人に向かって、ただ大鷲の羽摶はばたくように、さっと飛び掛かって行ったからであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
庄吉は、短刀を突き出して、鶏の羽摶はばたくように、片袖を翻しつつ、飛びかかった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
返事がないから、無断でずっと這入はいって、床几しょうぎの上へ腰をおろした。にわとり羽摶はばたきをしてうすから飛び下りる。今度は畳の上へあがった。障子しょうじがしめてなければ奥までけぬける気かも知れない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれは別に治三郎の方を見向きもしないので、彼はすこしくあてがはずれた。なんだか忌々いまいましいような気になったので、彼はそこらの小石をひろって投げつけると、鶏は羽摶はばたきをして姿を消した。
夢のお七 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と驚いたジョン少年は思わず声を筒抜かせたが、それより一層驚いたのは足を折られた大烏で、バタバタと枝から離れると、さも倦怠だるそうに羽摶はばたきながら、森を潜って舞って行く。
「あれは……。風の音でない。大きい鳥の羽摶はばたきの音だ。」
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
痙攣けいれん! 羽摶はばたき! 全身麻痺! 雀はまりのように固まった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)