罪科ざいか)” の例文
千生は自分の不心得から母が殺されるようになったので、重き罪科ざいかにも行わるべきところ、格別のお慈悲を以って追放を命ぜられた。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そののがれられぬを観じて神妙にお縄をちょうだいしたらどうだッ! このにおよんで無益の腕立ては、なんじの罪科ざいかを重らすのみだぞッ!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いや、罪科ざいかただすのではない。もとより初めに、このほうをつけてきた時から、そちが掏摸すりだということは見抜いていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この、いぶかるがごとく、訴うるがごとく、深い眼のうちに我を頼るがごとき女の表情を一瞬たりとも、我から働きかけてこわすのは、メロスのヴィーナスのかいなを折ると同じくおおいなる罪科ざいかである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
九郎右衛門はきもの据わった男だけに、今更なんの未練もなしに自分の罪科ざいかをいさぎよく白状したので、吟味にちっとも手数が掛からなかった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
京都で起こったあの騒動——竹内式部たけのうちしきぶの密謀が破れ、公卿くげ十七家の閉門を見、式部は遠流おんる、門人ことごとく罪科ざいかになって解決した——あの事件の時
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)