“緩(くつろ)” の例文
目も隠れるほど深く俯向(うつむ)いたが、口笛を吹くでもなく、右の指の節を唇に当て、素肌に着た絹セルの単衣(ひとえ)の衣紋(えもん)を緩(くつろ)げ——弥蔵(やぞう)という奴——内懐に落した手に、何か持って一心に瞻(みつ)めながら
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
垢抜(あかぬけ)して色の浅黒いのが、絞(しぼり)の浴衣の、糊(のり)の落ちた、しっとりと露に湿ったのを懊悩(うるさ)げに纏(まと)って、衣紋(えもん)も緩(くつろ)げ、左の手を二の腕の見ゆるまで蓮葉(はすは)に捲(まく)ったのを膝に置いて、それもこの売物の広告か
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)