緋毛氈ひまうせん)” の例文
君勇きみゆう』とか『秀香ひでか』とか、みやこ歌妓うたひめめた茶色ちやいろみじか暖簾のれんが、のきわたされて、緋毛氈ひまうせん床几しようぎ背後うしろに、赤前垂あかまへだれをんなが、甲高かんだかこゑしぼつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
晝はいくらか客もありますが、日が暮れるとサツサと店をしまつて、婆さんと娘が、菓子箱と緋毛氈ひまうせんを背負ひ、大藥罐おほやくわんをブラ下げて自分の家へ歸つてしまひます。
偶然祇園ぎをんの祭禮に出會つて其の盛觀を目撃する事を得た。人家の欄干に敷き連ねた緋毛氈ひまうせんの古びた色と山鉾の柄に懸けたゴブラン織の模樣とは今も猶目に殘つてゐる。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)