綿入めんいり)” の例文
引き越して新たに家をなす翌日あしたより、親一人に、子一人に春忙がしき世帯は、れやすき髪にくしの歯を入れる暇もない。不断着の綿入めんいりさえ見すぼらしく詩人の眼にうつる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と案内も待たずにどんどんと二階へ上つて来たのは、鼠色のめて皺の寄つた背広を着た執達吏と、今一人は黒の綿入めんいりのメルトンの二重まはしを来た山田と云ふ高利貸であつた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
あゐなり、こんなり、萬筋まんすぢどころの單衣ひとへに、少々せう/\綿入めんいり羽織はおりこんしろたびで、ばしや/\とはねをげながら、「それまたみづたまりでござる。」「如何いかにもぬまにてさふらふ。」と、鷺歩行さぎあるきこしひねつてく。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)