絵所えどころ)” の例文
「さようかナ。菊王はそう見えもしようが、わしはまさか、六波羅武士とは見えもしまい。遊山姿ゆさんすがた絵所えどころの絵師——というつもりで、かく入念に、扮装いでたちしてまいったものを」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳営絵所えどころ預りは法眼狩野融川かのうゆうせんであったが、命に応じて屋敷に籠もり近江八景を揮毫きごうした。大事の仕事であったので、弟子達にも手伝わせず素描から設色まで融川一人で腕をふるった。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また絵所えどころに幾人も画家がいますが、席上の絵のき手に選ばれておおぜいで出ます時は、どれがよいのか悪いのかちょっとわかりませんが、非写実的な蓬莱山ほうらいさんとか、荒海の大魚とか
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この一異説のほかにも、武蔵画はすべて、細川家の絵所えどころの画家矢野吉重の作品であった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たて六尺あまりよこげんのいちめんにわたって、日本全土、群雄割拠ぐんゆうかっきょのありさまを、青、赤、白、黄などで、一もく瞭然りょうぜんにしめした大地図の壁絵。——さきごろ、絵所えどころ工匠こうしょうそうがかりでうつさせたものだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)